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相続登記に名寄帳は使えるのか?

寝屋川市の司法書士 渡辺です。

相続が開始すれば、被相続人が所有していた不動産(土地・家屋)を把握する必要があります。

被相続人が所有していた不動産がわからない場合、まず市区町村役場で名寄帳を取得します。

名寄帳は、不動産(土地・家屋)を所有者ごとにまとめたものです。

そこには、当該市町村に被相続人が所有していた不動産が一覧になっています。

被相続人が他市町村に所有していた不動産の名寄帳を取得したいのであれば、

別途、その市町村役場に請求する必要があります。

相続登記の申請には、不動産の評価額の記載がある公文書(法務局によってはコピー可)

を添付します。

名寄帳にも、評価額が載っています。ならば、

「名寄帳(またはそのコピー)を法務局に出せばいいんじゃないの」

と、思いませんか?

名寄帳の発行に手数料がかからない市町村もあるみたいですが、

れっきとした公文書ですからね。

はたして、相続登記に名寄帳は使えるのでしょうか?

相続 登記 ご相談ください。

寝屋川市 香里園 あいゆう司法書士事務所

目次

法務局では名寄帳はNG?

実は、司法書士になる前に、

「名寄帳は法務局では受理されない」

と、聞いていました。

はじめに名寄帳を取らなあかんけど、あらためて法務局提出用に評価証明書を取らなあかんらしいです。

ところが、司法書士になって、実務に携わるようになると、

「地方によっては、名寄帳でOKのところがある」

という話を耳にするようになりました。

効用① 評価額証明書として

ある相続案件で、相続人の方が名寄帳を持っていらっしゃいました。

「法務局では名寄帳はNGですので、4月か5月に届く固定資産税課税通知書か、

なければ固定資産税評価証明書を取るしかないですね」

なんていって、コピーだけ取ってお返ししてしまったのですが……、

別にわからないところがあって、管轄法務局に問い合わせたときに、

「評価額がわかる書類って……」

と、ついでに聞いてみたら、

「名寄帳のコピーでいいですよ」

っていわれました。評価額の記載があればよいとのことです。

あまりにも意外な反応で、驚いてしまいました。

相続人にその旨をお伝えして、また名寄帳を持ってきていただきました。

持ってきていただいたものは、一旦はちゃんと預かっておいたほうがよいみたいです。

効用② 所有権証明書として

相続登記の申請書には、被相続人の住民票の除票を添付して、

登記簿に記載の所有者が被相続人であることを証明する必要があります。

ところが、住民票の除票に記載の被相続人の住所が、登記簿に記載の所有者の住所と違うことがあります。

この場合は、戸籍の附票を取得して、死亡時の住所からさかのぼって

登記簿に記載の所有者の住所まで沿革をつけなければなりません。

戸籍の附票には、改製時の住所、およびそれ以降の現在までの住所が記されています。

戸籍の附票で沿革がつかなければ、改製原附票を取得して、さらにさかのぼります。

(戸籍のコンピューター化前の改製原附票をすでに廃棄している市町村もあり、

その場合は、沿革をつけることができない)

それでも、沿革がつかないことがあります。

その場合は、管轄の法務局へ相談することになります。

改製原附票とは

戸籍の附票は、法律の改正や様式の変更により作り直すことがあります。

これを附票の改製といい、改製前の附票を改製原附票といいます。

改製原附票には、その附票が改製されるまでの住所の履歴が記されています。

余 談

余談ですが、住民票の除票に記載の被相続人の住所が、

登記簿に記載の所有者の住所(○○市●●番地1)と違うことがあり、

戸籍の附票では沿革がつかず、改製原附票まで取ってきて、

何とか「○○市●●番1」という記載を見つけましたが、法務局の人に、

「ちがいますね」

と、あっさりと断じられたことがありました。

この所有権移転登記は、50年以上も前にされたものですが、

「この住所は、いったい何をみて記載したんやろか」

って、首をかしげてしまいますね。

住民票の除票+名寄帳=?

――上申書を作らなあかんやろな。

半ば諦観しながら法務局へ問い合わせました。すると、

「被相続人は亡くなったばかりですかね」

と、いわれ、

「はい」

と、応えると、

「名寄帳を出されますよね。それを原本還付していただけたら」

と、指示されました(ここでも、法務局の方から名寄帳といっている)。

「あと、住民票の除票も出されますよね」

ともいわれました。

この法務局では、名寄帳と除票の合わせ技で審査するらしく、

名寄帳に記載された当該不動産の所有者の住所・氏名が、

住民票の除票に記載の被相続人の住所・氏名と一致していればOKとのことです。

あっさりとそうおっしゃるということは、同様のケースがけっこうあるんでしょうね、きっと。

ただ、この場合、コピーだけではダメで、名寄帳の原本を出さなければならないようです。

おそらく便宜として作られた地方ルールで、地元では通用しないかもしれません。

ともかくも、上申書を作らなくてすんだのはありがたいですね。

補 遺

法務局で無用と思われた名寄帳に、実は、”一粒で二度おいしい”ならぬ、一通で二つの効用がありました。

相続人が名寄帳を持って来られたときに、

「名寄帳は、法務局で受理されない」

と、決めつけてはいけませんね。

で、どこの法務局の話なのかって?

“バス旅”で、リーダーが、

「バスがない!バスがない!つながらない!」

と、のたもうたようなところです(わかるかな?わかんねえだろうな)。

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