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建物を取り壊す時にする手続き

"建物は滅失しますので、滅失委任状をお願いします。"

わかれの取引をする際に、買主側の司法書士からそういわれることがたまにあります。

"建物を滅失する"ってどういうこと?

"滅失委任状"、って何ぞや?

誰に委任すればええん?

どんな書類を作ればいいの?

そんな場合に慌てず落ち着いて決済に赴くことができるよう、"あんちょこ"を作ってみました。

先に以下の記事をご覧いただければ、理解しやすいと思います。

今さら聞けない⁉書面申請のやり方

登記添付書類 聞けなくて間違うこと

立会決済 司法書士ならどう動く?  シリーズ

基本用語篇

売主代理 [上]

売主代理 [下]

目次

どんなケース?

相続人が相続で得た土地と建物を不動産業者に売却するケースが多いようです。

むろん、建物を取り壊すのは、買主である業者さんの意向です。

取り壊す建物は、古い一軒家です。

古い建物を取り壊して、新築建物に建て替えて利益を上げようとするんでしょうね。

建物を取り壊す時にする手続きとは?

「建物を滅失する」とは、
「建物を取り壊す」
と、いうことです。

建物を取り壊したら、どんな手続きをすればよいのでしょうか?

建物の滅失にも登記が必要

建物を取り壊したら、建物の滅失の登記をします。

建物滅失登記は義務なのか?

建物滅失登記は、義務です。

この点、売買を原因とする所有権移転登記とは違います。

建物を取り壊したら、1か月以内に建物の滅失の登記を申請しなければなりません。

誰が申請するの?

建物の滅失の登記の申請人は、建物の所有者、すなわち売主さんです。

もちろん、代理人が申請することもできます。

建物滅失登記を申請できる専門家とは?

立会に司法書士しかいなかったとしても、司法書士には建物滅失登記を申請する権限がございません。

建物滅失登記を申請する権限があるのは、土地家屋調査士だけです。

では、買主側司法書士は預かった滅失委任状を、どう扱うんでしょうか?

自身が土地家屋調査士を兼ねていれば、建物滅失登記も自分で申請するでしょう。

そうでない場合、自身または買主(業者)とつき合いのある土地家屋調査士に依頼するんでしょう。

滅失委任状

土地家屋調査士が建物滅失登記を申請する場合、売主さんからの委任状が必要になります。

これが欲しい、といわれているのですね。

以下に、滅失委任状の記載例を示します。

滅失委任状

委任状

この間空白(この部分に、土地家屋調査士の住所・氏名を記載)

私は、上記の者を代理人と定め、下記の権限を委任します。

1.下記登記に関する一切の件
・建物の表示 下記の通り
・登記の目的 建物滅失
・ 原 因  年月日取壊し

1.復代理人選任並びに必要に応じ原本還付請求受領の件

1. 登記完了後に通知される登記完了証の受領の件

1.登記申請の取下げに関する一切の件

年月日

委任者  (=売主)
住所
氏名 ㊞(認印でかまいません。)

建物の表示

委任状記載の注意点

受任者の部分は空白のまま買主側司法書士に渡します。

念のため、余白に捨印(売主の認印)を押してもらうことをお勧めします。

日付は、空白にします。

決済時点では建物は存在しているでしょうから、建物を取り壊すのは決済が終わってからになります。

いつ取り壊すかは、買主(業者)の都合で決まるのでしょうから、おそらく決済時点で日付を入れられません。

建物を取り壊してからでなければ、建物の滅失の登記を申請できませんからね。

建物滅失登記申請

建物滅失登記の必要書類、登記申請書の記載例を示します。

必要書類

・建物滅失証明書(取壊業者等が作成したもの)
・取壊業者等の登記事項証明書(取壊業者等が法人の場合)※
・取壊業者等の代表者の印鑑証明書

※申請書に当該法人の会社法人等番号を記載した場合、登記事項証明書の添付は不要

特筆すべきは、建物の登記名義人である売主名義の書類が何も要らない、ということです。

売主が持っている建物の所有権の登記識別情報どころか、実印や印鑑証明書なんかも一切不要なんですね~

登記申請書

登 記 申 請 書
登記の目的 建物滅失
添付情報  建物滅失証明書(会社法人等番号 xxxx-xx-xxxxxx)
年月日申請 ○○ 法 務 局
申 請 人 
建物の表示
不動産番号
所在
家屋番号
主である建物又は附属建物
種類
構造
床面積
登記原因及びその日付 年月日取壊し

費用ならびに注意点

添付情報中の建物滅失証明書の会社法人等番号は、建物滅失証明書を作成した取壊業者等が法人の場合に、その法人の会社法人等番号を記載すれば、取壊業者等の登記事項証明書の添付が不要になります。

建物滅失証明書を作成した取壊業者等が法人でなければ、会社法人等番号は記載しません(できない)。

建物の表示は、登記事項証明書の記載を引き写します。

不動産番号を記載すれば、所在、家屋番号、種類、構造及び床面積の記載を省略できます。

が、不動産番号を記載しても、"登記原因及びその日付"の記載は必要です。

登記原因の日付は、建物滅失証明書記載の建物の取壊しの日を記載します。

国(法務局)に支払う登記の手数料(登録免許税)は、無料です。

が、土地家屋調査士に登記の申請を依頼すれば、その分の報酬を支払うことになります。

相場は、4~5万円程度といわれています。

登記完了後

建物滅失登記が完了したら、取り壊した建物の登記簿はどうなるのでしょうか?

買主である業者さんが、その後土地を分譲し、一部だけを売却する際の登記を申請する場合の注意点とは?

建物滅失登記がされるとどうなるのか?

建物の滅失登記がされると、所有権や抵当権など権利に関する登記が残ったまま登記簿が閉鎖されてしまいます。

そうなると、売主が登記識別情報を持ち続けていたところで、過去にその権利を有していたというだけのことで、何の価値のないただの紙切れでしかなくなってしまっていることになります。

滅失登記に関して売主名義の書類が何も要らなかったのは、そういうことなんですね。

分譲地の売却時に気をつけろ!

業者さんによっては、建物を取り壊した後、分筆してから土地を分譲することがあります。

この場合、売主である業者さんや(根)抵当権者である金融機関の担当者が持ってくる登記識別情報の扱いに注意が必要です。

登記識別情報は後日残りの土地を売却する際に使い回すので、原本を登記所に出してはいけません!

登記識別情報は、一旦登記所へ出してしまえば還してもらえません。

登記簿で見抜けなくても、(根)抵当権抹消登記の登記原因証明情報である解除証書に、「"一部"解除」と書いてあれば気づけるかもしれません。

登記識別情報は、コピーをとった後、登記識別情報の右横に申請した司法書士が押印(認印可)し、再封印用のシールを貼付してから、権利者(売主・金融機関)に返します。

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