家庭裁判所への初回報告
大阪家庭裁判所では、後見申立記録閲覧時に、
「専門職後見人等候補者の方へ(事務連絡)」
と題した紙を渡されます。
そこにはその後の手続の流れについて箇条書きで書かれており、
――後見人の場合は、審判確定後1か月と3週間以内に財産目録及び収支予定表を裁判所宛に提出してください。
と下線が付されています。
2か月ではなく、1か月と3週間というのは、いかにも中途半端なんですが、そこを強調しているので、何かしらの意味があるのでしょう。
後見人就任直後は、とかくすることが多く、非常にタイトです。
被後見人ご本人はもちろん、親族等の関係者が協力的であれば、何とか間に合わせられるかもしれませんが、通帳ひとつ預かるのでも手間取ればかなり厳しい……
まずは、何を報告すべきかを把握しましょう。
財産目録及び収支予定表は、大阪家庭裁判所 後見サイトにExcelファイルがあります。
成年後見 ラインナップ
目次
財産目録
1. 預貯金・現金
2. 有価証券関係
3. 不動産
4. 保険契約
5. 債権
6. 負債
記入に際して使用した資料をコピーし、添付書類として家裁に提出します(登記簿謄本のみ原本を提出)。
預貯金・現金
通帳を記帳してから残高を記載します。
通帳の下記の3か所を、A4コピーし、添付書類として提出します。
①通帳の表紙
②口座番号と名義人が記載されている頁(ふつうは、表紙をめくった頁)
③現在の預金残高の記載がある頁(残高の記載に下線を引いておけば親切ですね)
コピーする際、後で編綴しても見えるように、左側の余白を広めにとるようにします。
預貯金・現金ともにその時点での暫定的なものでかまいません。
(後で本人すら知らなかった預貯金や現金が発見されることも少なくない)
提出時に金融機関に後見人の届出をしていなくても大丈夫です(というか、仕方ない)。
有価証券関係
株式や投資信託等がある場合に記載します。
不動産
登記簿謄本を法務局から取り寄せて、引き写します。
申立て書類に登記簿謄本があったとしても、後見人が別途登記簿謄本を取得します。
登記簿謄本だけは、原本を家裁に提出します。
保険契約
生命保険、がん保険等、本人が契約書又は受取人になっているものがあれば記載します。
提出時に保険会社に後見人の届出をしていなくても大丈夫です(というか、仕方ない)。
債 権
貸付金等がある場合に記載します。
負 債
ローンや家賃・公共料金の未払い等があれば記載します。
相続財産目録
相続財産がない場合は、作成しなくてかまいません。
収支予定表
現時点での収支予定を記載します(「予定」なので、暫定的なものでよい)。
あくまで定期的な収支なので、予期できない臨時のものまで含めて記載する必要はありません。
収支予定は、今後の後見業務の指針を立てるための参考にするものです。
プラス・マイナスで評価が変わる、というものではありません。
あまりにもマイナス額が大きい場合は、施設等の関係者はもちろん、行政や社協、包括まで巻き込んで相談する必要があると思います(でないと、報酬がもらえませんからね)。
収 入
年金額通知書、確定申告書等を見て記入します。
【注意!】月額を記入(国民年金なら2で割る)
企業年金等による収入があれば、その他の年金欄に記入します。
支 出
医療費
病院代等はもちろん、介護用おむつを着けている場合は、おむつ代も記載しましょう。
おむつ代は月1万5千円程しますから、あるとないとでは収支が変わってきます。
日常生活費
生活費は、月10万円くらいまでが妥当でしょう。
生活費については、根拠資料は不要です。
生活費(食費,衣料費等)とありますが、「等」の範囲がどこまでなのか不明瞭です。
ある家庭では、水道光熱費は等に含まれないとして、その他に記載しました。
税金, 社会保険料
住民税、健康保険料、介護保険料は、年金振込通知書の記載を2で割って記入します。
所得税、固定資産税、生命保険料は、支払があれば記載します。
税金・社会保険料は、根拠資料をコピーして提出します。
その他
その他欄が2つあります。
後見事務費
後見人が被後見人を訪問する際にかかる交通費に加えて、被後見人が病院や施設に通う際に付き添いの家族等の交通費等、本人のために何かをしてあげた際にかかった費用を合計し、記入します。
もう1つの欄に記載することはほとんどありませんが、被後見人が財産をお持ちの場合は、親族への生活費(5万円)を記入したことがあります。
支払先の欄は、明確なら書くべきなのでしょうけど、あまり記入したことはありません。
提出方法
提出は、持参か郵送です。
郵送の場合、登記と同様書留かレターパックで出される方もいらっしゃいますが、自分は普通郵便で出しています。切手代も被後見人の財産から出しますからね。
大阪家裁は自主申告制をとっており、2か月を少し過ぎたくらいでは誰からも何も文句とかいわれないそうですが、他の懸命に勤められている司法書士後見人の印象低下にもつながりかねないので、早めの提出を心がけ、間に合わなさそうなら、早めに家裁に連絡しておきましょう。
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