Blog ブログ

Blog

HOME//ブログ//盗賊か乱世の梟雄か 孔子の好敵手 魯国を牛耳った下剋上の代表 陽虎(陽貨)(春秋 魯)(2) 独裁者

中国史人物伝

盗賊か乱世の梟雄か 孔子の好敵手 魯国を牛耳った下剋上の代表 陽虎(陽貨)(春秋 魯)(2) 独裁者

陽虎(陽貨)(1) はこちら>>

孔子と因縁があったことで知られる陽虎(陽貨)は、

出自こそさほど高くはなかったとおもわれるものの、

魯の宰相である季孫氏の家臣として頭角をあらわし、

家宰(家老)にまでなった。

知略と武勇にすぐれたかれは、家中で実力を蓄えはじめ、

紀元前510年頃には、国君を凌駕した三桓氏と同等の権勢をもつに至ったとおぼしい。

だが、野心家のかれは、それだけでは満足できず、

紀元前505年に政変(陽虎の乱)を起こし、魯で主君や大臣を凌駕する支配者にまでなった。

国君からみれば陪臣(また家来)にすぎないながらも魯国の実権を握り、

下剋上を体現してみせた陽虎は、どのような政権運営をおこなってゆくのか。

中国史人物伝シリーズ

目次

素通り

「鄭を伐つように」
という要請が、盟主国晋からきた。
鄭が、王室の内乱に乗じて周に侵攻したことをとがめてのことである。
「いかがいたそう」
と、定公から諮われ、
「鄭を、伐つべきです」
と、陽虎は応えた。
陽虎は定公に親征してもらい、定公六年(紀元前五〇四年)二月に匡を攻め取った。
この軍は、往路は衛を無断で通り過ぎ、帰途につく際に、陽虎が、
「衛の南門から入り、東門から出ましょう」
と、季孫斯と仲孫何忌に進言した。
ふたりは陽虎の要求を拒めず、かれのいうがままに行動し、衛都近郊の豚沢で宿営し、衛の反応をうかがった。
しかし、衛は追手を出してこなかった。

両卿差遣

遠征から凱旋すると、陽虎は定公に拝謁し、
「匡邑と鄭の捕虜を、晋に献じなさいますよう」
と、奏上した。
もはや、魯には陽虎に逆らえる者などいない。
「あいわかった」
定公はそう応じ、季孫斯を晋に聘問させることにした。
晋の歓心を得たい陽虎は、さらに、
「晋君のご夫人にも、幣物をお贈りなさいませ」
と、たたみかけるように進言した。
「上卿に、そんなことまでさせるのか」
「いえ、これは司空どのに」
と、陽虎はいい、仲孫何忌のほうをむいた。
こうして、夏に季孫斯と仲孫何忌は晋を訪れた。
両卿が帰国すると、陽虎は定公と三桓氏の当主らと周社(魯の国社)で盟い、
ついで国人と亳社(商の社、魯には商王朝の遺民が多かったため、商の社が設けられた。)で盟い、
さらに、曲阜の大通である五父の衢で神に詛った。

夜 襲

「鄆が、斉に通じております」
農閑期となる冬が到ると、陽虎はそう語げて、季孫斯と仲孫何忌に鄆を攻めさせた。
年があらたまると、斉が鄆と陽関を魯に返還してきた。
「大慶、大慶」
そう喜んだ陽虎は、そこに移り住んで政治をおこなった。
秋になると、斉の国夏が魯の西辺を侵してきた。
魯は、迎撃の兵をだした。
斉の陣をみて、
――ここの備えが薄い。
と、みてとった陽虎は、
「夜襲をかけましょう」
と、いって季孫斯の御者となり、仲孫何忌の兵とともに出兵した。
そのとき、仲孫何忌の御者であった公斂処父(公斂陽)が、
「陽虎は禍にかかろうとはおもうておらん。きっと死ぬことになろう」
と、伏兵の存在を示唆すると、季孫氏の家臣の苫夷も、
「陽虎が二子を禍難におとしいれようとしている。役人に引き渡すまえに、殺してしまおう」
と、同調した。
すると、陽虎は懼れて引き揚げた。

客 気

何としても斉を伐ちたい陽虎は、
「斉に、報いねばなりませぬ」
と、定公に進言した。
陽虎の意見に逆らえない定公は、定公八年(紀元前五〇二年)の年明け早々に陽州(陽穀)を攻め、
さらに二月には済水を渡り、廩丘の郛(外城)を攻めた。
魯軍が衝車で郛を毀そうとすると、城兵が魯軍の衝車に火を放った。
これに対し、魯兵は馬の背にかけていた褐(麻の毛布)を水に濡らして火を消すと、
一転して猛攻をかけ、郛を毀した。
ところが、城内から斉兵が撃ってでてきたので、魯兵はおどろいて逃げてしまった。
そのなかに冉猛のすがたをみた陽虎は、それをみないふりをして、
「冉猛がここにいれば、きっと撃ち破れたろうに」
と、うそぶいた。
冉猛はそれをきいて奮い立ったか、反転し、斉兵のなかに突撃した。
ところが、振り返ってみると、後に続く者がいなかった。
そこで、わざと転倒して、追撃をやめた。
それをみて、陽虎は、
「尽く客気なり」
と、苦々しくいった。
客気とは、から元気のことである。
陽虎が冉猛を発奮させたのが偽なら、冉猛が転んだのも偽である。
つまり、冉猛の勇は真の勇ではなく、冉猛に擬態を演じさせたおのれを自嘲したのである。

SHARE
シェアする
[addtoany]

ブログ一覧