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後見支援制度~後見制度支援信託と後見制度支援預金 利用適否の検討


後見人就任時に、家庭裁判所から後見支援制度の利用の適否について検討するよう指示された場合、どのように業務を進めていけばよいでしょうか?


成年後見 ラインナップ


司法書士が後見人になるまでにすること


後見人になったらまずすべきこと


後見人になったら次にすべきこと―後見人就任の届出


家庭裁判所への初回報告

目次

後見支援制度って何?

後見支援制度には、後見制度支援信託と後見制度支援預金があります。

後見制度支援信託は、後見制度による支援を受ける方(本人)の財産のうち、日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、通常運用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組みのことです。

後見制度支援預金は、本人の財産のうち、日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、通常使用しない金銭を後見制度支援預金口座に預け入れる仕組みのことです。

これらの制度の導入目的は、親族後見人が手元で管理する財産を少なくし、残りの財産をフリーズすることで、横領等の不正行為を防止することです。

信託(預入)した金銭は、自由に引き出すことができなくなるので、この制度を利用できるのは、被後見人がある程度財産をお持ちの場合に限られます。

大阪家裁では、被後見人の預貯金が1,200万円以上の場合、後見支援制度の検討を指示される可能性が高いようです。

後見支援制度は、あくまで「運用」であり、法令に直接の根拠はありません。

家裁から後見支援制度の検討を指示されたからといって、必ずしも後見支援制度を利用しなければならないわけではありません。

リレー方式と複数選任方式

家庭裁判所は、後見支援制度の利用が適当と判断した場合、弁護士・司法書士等の専門職を後見人(専門職後見人)に選任します。

専門職後見人の選任方法には、リレー方式と複数選任方式の2つがあります。

リレー方式とは、最初に専門職だけを後見人に選任し、信託契約締結後、専門職後見人に辞任してもらい、親族後見人に交代する方式です。

複数選任方式とは、最初から専門職後見人と親族後見人を選任する方式です。

大阪家裁では、リレー方式だけを採用し、複数選任方式はしていないとのことです。

従って、以下はリレー方式を念頭に置いて記載します。

親族が申立時に後見支援制度を拒んでいる場合は、原則に戻って親族後見人に加えて専門職を後見監督人に選任すると思います。

家庭裁判所への初回報告

専門職後見人は、就任後、親族後見人候補者等の協力を得ながら本人の財産状況の調査を行い、財産目録及び収支予定表を作成し、審判確定後1か月+3週間以内に提出します。

ここまでは、他の後見人と全く同じです。

後見支援制度の利用適否の検討

専門職後見人は、後見支援制度の利用の適否について検討し、家裁へ報告書を提出することを求められます。

以下、検討時の留意点を列挙します。

調査事項

・本人の意思(後見支援制度を利用するかどうかについての意思)
・本人の健康状態
・親族関係
・財産の種類
・親族間に紛争があるかどうか
・遺言書があるかどうか
・将来、財産や身上(病状、生活状況等)に大きな変動がありうるかどうか

現預金以外の財産が存在する場合

不動産・保険・株式を換金してまで信託する必要はありません。

換価することが困難な財産が含まれる場合、後見支援制度では財産保護が十分に図れなくなります。

財産運用上の利回りを期待せず、本人が愛着やこだわりで保有していた場合などは、本人の意思を尊重する必要があるでしょう。

預金口座を多数開設していた場合

ペイオフ対策等で多数の預金口座を開設していた場合

本人が金融機関と深いつながりがあり、特に強い愛着をもって取引をしていた場合

などのように本人の意思が強いと思われる場合などは、本人の意思を尊重する必要があるでしょう。

利回りのよい定期預金は、解約したくないといわれることが少なくないと思います。

親族後見人候補者の適格性

親族後見人候補者の適格性については、家庭裁判所からよく問われるのでしっかりと見極めておく必要があります。

年齢の他、以下の場合、適格性に問題ありと判断します。

・本人の財産を無断で使ったことがある
・本人を虐待したことがある
・本人と争ったことがある
・多額の負債がある
・過去に自己破産や債務整理をしたことがある
・生活面で自立できていない
・後見事務遂行能力に疑義がある

後見人には、親族後見人候補者の適格性に関する事情を調査する権限はありません。

後見事務で知り得た範囲で判断するようにし、直接訊くのはやめましょう!

家庭裁判所への報告

専門職後見人は、上記調査結果をもとに検討し、後見支援制度の利用適否を判断し、家庭裁判所に報告書を提出します。

報告書には、親族後見人候補者の受任の意思や住所変更の有無についても記載します。

利用に適すると判断した場合

家庭裁判所から送られてきた報告書に必要事項を記入し、84円切手を貼付した返信用封筒を同封して、送付します。

利用に適しないと判断した場合

後見支援制度の利用が適当でないと判断した場合は、速やかにその理由を記載した報告書を家裁へ提出します。報告書の決まった書式はありません。

家庭裁判所は、専門職後見人が下した判断を尊重してはくれますが、

・専門職後見人が後見支援制度の利用を不適とした判断は、親族後見人候補者の意思を確認して行ったものであること。
・後見支援制度を利用しない場合、専門職が後見監督人に選任されることを親族後見人候補者が理解していること。
・後見監督人への報酬が被後見人の財産から出されるため、被後見人の財産が減ることを親族後見人候補者が理解していること。
・親族後見人候補者の適格性に問題がないこと。

以上4点の記載が報告書にない場合は、家庭裁判所から意見書のFax送信を求められます。

裁判所からの指示は、文書ではなく電話でされますので、返信用封筒の同封は不要です。

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