ご両親が連続して亡くなられた場合の相続登記
目次
- ○ 具体的事例
- ○ アプローチ
- ・実体から手続へ
- ・中間省略登記
- ○ 登記申請(解答)
- ・登記申請書
- ・登記申請数による手数料の違いは?
- ○ 添付書類
- ・遺産分割協議書
- ・ポイント
- ・押印について
- ・共有名義もOK!
- ○ 免税の特例
具体的事例
ある不動産の所有権登記名義をお持ちのAさんが亡くなりました。
その後、当該不動産の登記名義を変更しないうちにAさんの配偶者であるBさんが亡くなりました。
AB夫妻には、CさんとDさんの2人のお子さんがおられます(他に相続人なし)。
CさんとDさんの話し合いで、当該不動産はCさんが継ぐことに決まりました。
この場合、登記名義をAさんからCさんに変えるには、どうすればよいでしょうか?
アプローチ
実務ではよくある事例ではないでしょうか。
当事務所でも、このような相続のご相談をお受けすることが多いです。
実体から手続へ
事例では、Aさんの相続とBさんの相続という2つの相続が発生しています。
Aさんの相続人→Bさん(持分4分の2)、Cさん(持分4分の1)、Dさん(持分4分の1)
Bさん(持分4分の2)の相続人→Cさん(持分4分の1)、Dさん(持分4分の1)
愚直に考えれば、
①相続を原因とする所有権移転登記により、BC名義(持分2分の1ずつ)にする。
②相続を原因とするB持分移転登記を入れる。
と、なります。
持分が出てくると、ややこしいですね。
もう少しよく考えてみましょうか。
同じ結論であれば、
③相続を原因とする所有権移転登記により、Bの単独名義にする。
④相続を原因とする所有権移転登記により、Cの単独名義にする。
とした方が、わかりやすいでしょう。
中間の相続をBさんの単独相続にする。これが、ミソです。
この場合、③の登記申請に登録免許税はかかりません(令和3年3月31日まで)。
さらに、
中間省略登記
③のように中間の相続が単独相続であれば、登記名義人から最終の相続人名義へ直接相続登記をすることができます。
これを中間省略登記といいます。
つまり、一つの登記申請により、不動産の登記名義をAさんからCさんへ変更できるのです。
登記申請(解答)
申請書への記載例は、以下のとおりです。
登記申請書
登記の目的 所有権移転
原 因 年月日B相続年月日相続(年月日は、前者がAさんの死亡日、後者がBさんの死亡日)
相 続 人 (被相続人 A)住所 C
添付情報 登記原因証明情報 住所証明情報 代理権限証明情報
年月日申請 □■ 法 務 局
登録免許税 金○○円
不動産の表示
登記申請数による手数料の違いは?
前述の③A→B及び④B→Cのように実体に照合した2件の相続登記を申請しても登録免許税の総額は同じですが、できれば一申請で済ませたいですね。
添付書類
添付書類で注意が必要なのは、遺産分割協議書です。
Aさんの相続については、Bさんが単独で相続した、ということがわかるような記載にする必要があります。
遺産分割協議書の記載例は、以下のとおりです。
遺産分割協議書
遺産分割協議書
年月日相続が開始した被相続人Aの遺産について、同人の相続人全員(なお、相続人Bは年月日死亡)において分割協議を行った結果、下記の通り決定した。
記
1.相続財産中、次の不動産については、相続人Cが単独で取得する。
所 在
地 番
地 目
地 積
以上の通り相続人全員による分割協議が成立したので、これを証するため本書を作成し、署名押印する。
年月日
故A
相続人兼Bの相続人 C ㊞
相続人兼Bの相続人 D ㊞(実印)
ポイント
最終の相続人であるCさんとDさんに関して、相続人兼「Bの相続人」と記載するところがミソです。
押印について
不動産を相続されないDさんには、必ず実印を捺していただきます。
不動産を相続されるCさんは認印でもかまいませんが、司法書士が提出する協議書にはもれなく実印が捺されてあります。
実印を捺したら、印鑑証明書の添付も必要です。
この印鑑証明書に、有効期限はございません。原本を還付してもらうことも可能です。
共有名義もOK!
中間省略登記が可能なのは中間の相続が単独相続である場合ですから、最終の相続は共同相続であってもかまいません。
従いまして、協議書の内容を変えれば、Dさん単独名義にすることはもちろん、CD共有名義にすることもできます。持分も任意です。
免税の特例
登記名義人となっている被相続人Aから相続人Bが相続により土地の所有権を取得したが、その相続登記をしないまま相続人Bが亡くなったとき、相続人Bをその土地の登記名義人とする相続登記については、登録免許税がかかりません(令和3年3月31日まで)。
この場合、必ずしも最終相続人Cがその土地を相続している必要はございません。
例えば、Bが生前にその土地を第三者に売却していたとしても、1次相続についての相続登記の登録免許税は免税となります。
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