寝屋川で司法書士が後見人をやってみた(1) 初めての後見人
司法書士は後見人として、どのような活動を行っているのか。
外部からはなかなかわかりにくいので、初めて後見人になったときに、どのようなことをしたのか、自身の体験を記してゆきます。
寝屋川で司法書士が後見人をやってみた
(2) 債務判明 さすガっス‼
(3) 後見人就任の届出
(4) 驚喜の新事実
(5) 財産の確保
(6) 本人宅への途
後見 参考サイト
司法書士が後見人になるまでにすること
後見人になったらまずすべきこと
後見人になったら次にすべきこと―後見人就任の届出
家庭裁判所への初回報告
相続 後見 ご相談承ります。
寝屋川 香里 あいゆう司法書士事務所
目次
- ○ 就任前―きっかけと受けた理由
- ○ 初めて後見人になったとき
- ○ 施設訪問
- ・被後見人と初面会
- ・最初にすべきこと
- ○ 通帳残高 312円――
就任前―きっかけと受けた理由
きっかけは、リーガルサポート(LS)からの配転でした。
LSからの情報では、
・市内在住の70歳代後半の男性
・施設入所されている
・市長申し立て
・財産は不明だが、負債があるらしく、報酬がもらえるかどうかはわからない
とのことでした。
家裁へ後見申立記録を閲覧しに行きましたところ、
・認知症の程度(物忘れがひどく、情緒不安定)
・金遣いが荒く、年金が入ったらすぐに使い切ってしまう
・自立して生活するのには難があると判断し、措置入所させた
・家族から関わり合いを避けられており、家族からの協力が見込めない
・負債があり、財産、特に債務が不明
全体にわたって金遣いが荒いということが強調されていました。
知人ではなく、利害関係がないので、後見人になるのに障害はなさそうです。
ただし、無報酬になる可能性がありそうです。
でも、まず1件はやらないと何をすべきかわからないので、勉強と思ってやってみよう、そう思いました。
初めて後見人になったとき
家庭裁判所から審判書謄本が特別送達されてくると、いよいよか、という気になりますね。
その翌日、市の担当の方から電話がかかってきました。まだ抗告期間中なので何もできないので、ご挨拶だけでしたが。
2週間経ち、抗告期間が明けたと思うのですが、どこからも何も言われないので、本当に後見人に就任したのかわからない、どうしよう……。なんて思っていたら、家裁から電話が。
後見申立記録のコピーを取りに来るように、とのこと。
これで、正式に後見人に就任していたことがはっきりしました。
この時、安心したと同時に不安になりましたね。ちゃんとやっていけるのかな、って。
他人の意思表示を代理して行うというのは、無責任に生半可ではできませんから。
まず、市の担当の方へ電話をかけました。すると、本人の施設で関係者が集まってこれまでの経緯について話す、ということで関係者と日にちを調整してくれました。市長申し立てだと、市が最初やりやすい形に持って行っていただけるので、大変やりやすいですね。
施設訪問
就任日から約半月後、被後見人が入所している施設を訪ねました。
施設、市、地域包括支援センターそれぞれの担当者――これが関係者全てのようです。
被後見人と初面会
「まず本人に会いましょう」
そう市の方からいわれて、被後見人の部屋へ――。
本人の正面に座ったものの、名刺を渡しただけで何を話せばよいかわからずにいると、施設の方が自分を後見人と紹介してくれたので、それに乗って、これから後見人として財産管理等を行う旨を話しました。
「そんなええことしてくれるんか。わしゃ、金ないけど、大丈夫やろか」
これが初めて聞いた被後見人の言葉でした。「金がない」というのは、この人の口ぐせらしいです。
「○○さん、先生が○○さんが今なんぼ持ってるか調べやなあかんさかい、通帳を渡してもらえへん」
最後に施設の方が被後見人にそう言ってくれました。これは助かりましたね。
さすがに初対面で「通帳貸して」なんて言う度胸はないですから。
通帳を預かり、部屋から退出。この間、わずか数分。
最初にすべきこと
本人との面会後、市と包括から措置入所に至るまでの経緯や措置費について、施設の方から本人の現状について説明を受けました。
被後見人の財産が不明なので、まずそれを調べてほしい。
これが市からの要請でした。包括からは、
とにかく家賃の滞納額が不明なので、まず大家さんに連絡して、滞納額を確かめてほしい。
と、言われました。これで最初にすることがはっきりしました。
本人に会ってから、
――穏やかそうに見えたけど、何で家族から見放されたんやろう。
というのが、ずっと疑問でした。会う前は、
――家族から見放されるくらいやから、乱暴か口が悪いかどちらかやろう。
なんて思っていたのですが、会ってみると、そのどちらでもなく、何で忌避されるのかわからなくなってしまいました。
「○○さんは、今まで何をしてたんかご存じですか」
と、ぶつけてみたところ、
「さあ~、あの人が今までどうしてはったんか全然知らへんなぁ~」
と、みな首をかしげるばかり。
誰も本人の生い立ちなんて知りません。まあ、知らぬが仏といいますからね。
30分程の訪問でしたが、有意義な時間でした。
一番の収穫は通帳を預かれたことでしたが、それが困難の端緒になろうとは……
通帳残高 312円――
施設からの帰り道、通帳をATMで記帳してみましたが、何回やっても、
この通帳は記帳できません。営業時間内に窓口へお越しください。
との表示が。
もう少し早く来ていれば、店が開いていたのに……
って悔いたところでどうしようもない。明日、出直すしかありません。
それにしても、通帳を開いて愕然としたのは残高が312円であったこと。
ほんまに無報酬ちゃうやろか。
そんな予感が脳裡をよぎりました。
銀行のサイトで通帳への記帳ができない理由を調べてみたところ、
――半年記帳がなければATMで記帳できません。
との記載を見つけました。
それやったら、店に言うたら記帳してもらえそうやな。
その時は、そう軽く思っていました。
この後、とんでもないことに苦しめられてしまうなんて思いもよらずに……
寝屋川で司法書士が後見人をやってみた(2) 債務判明 さすガっス‼
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