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理系脳vs文系脳!? 結婚前の夫妻名義の名変登記

貴方は、理系ですか?それとも文系ですか?
それが如実に現れそうな名変登記について考えます。

名変登記って重要なんですが、受験生の時にさんざん悩まされましたし、司法書士になっても気を遣うものなんですよ。

不動産登記 ラインナップ

不動産の評価額を証明する書類
登記添付書類 聞けなくて間違うこと
今さら聞けない⁉書面申請のやり方
お早目に相続登記をお勧めするケース  そのまま放っておくと……

目次

名変登記って何?

名変登記は、登記名義人の氏名や住所に変更があった場合にする登記です。

登記名義人氏名住所変更登記を省略して、"名変登記"と呼んでます。

変わったのが住所だけでも"名変登記"って呼ぶのは、違和感ありますが……

名変登記を申請するのは、抵当権抹消登記や売買による所有権移転登記の前提としてする場合が多いですね。

不動産の所有権者や売主の登記簿上の住所が現住所と違う場合、必ず先に名変登記を入れなければなりません。

――じゃあ、引越したときに名変登記を入れればええやん⁉

と、思ってしまいますが、不動産の権利に関する登記の申請は義務ではないので、引越した際に名変登記だけを申請することはまずありません。

問題(具体的な事例)

工藤新市・愛里ご夫婦が共有で所有されている不動産(敷地権付き区分建物、敷地権は1つ)について登記の依頼を受けました。

購入時は結婚前であったため、奥さんは旧姓で登記されています。

さらに結婚後、現住所(牧方市桜町2番3号)へ引越されております。

(現在の登記)
共有者 牧方市新町8番9号
持分2分の1 工藤新市
牧方市新町8番9号
持分2分の1 毛利愛里

これを以下のような登記に変更するにはどうすればよいでしょうか?
共有者 牧方市桜町2番3号
持分2分の1 工藤新市
牧方市桜町2番3号
持分2分の1 工藤愛里

注意 その壱

この登記を申請する際の注意点は、2つあります。

一申請でできるのか?

一つ目は、登記の申請回数。
普通に考えれば、2回の申請が必要です。

ところで、
住所が同一の共有者全員が同じ住所へ移転する場合は、一の申請ですることができる。
共有者の一人に氏名と住所の変更がある場合は、一の申請ですることができる。

そうすると、1つの申請でよいような気もしませんか?

1つでよいのか、それとも2つ必要か。

登録免許税が倍違いますからね。

実務では、お客様に請求する金額に関わってくるので、結構神経を使うところです。

普通は、登記申請前にお客様からお金を頂戴します。

2000円といっておきながら、実際は4000円だった、なんてなると、後からお客様に「実は……」と泣きついて2000円もらうわけにもいかず、自腹にするしかないでしょう。

一方、4000円もらっておきながら、実は2000円だった場合、良心が痛むでしょう(⁉)

2000円返すかどうかはさておき、
「間違ってました」
と、告げる度胸があるのだろうか……?

申請する登記の目的

結論を申しますと、2つ申請する必要があります。

では、どんな登記を申請すればよいでしょうか?

時系列を忠実に反映するのであれば、

①愛里氏につき氏名変更
②工藤夫妻につき住所変更

理系の人の思考からすれば、これがしっくりしますね。

ところが、登記所に相談票を出すと、別のやり方を指示されました。

①新市氏につき住所変更
②愛里氏につき氏名住所変更

①②の順番は、どちらが先でもかまいません。

要するに、人ごとに変更するのです。

科学データは、時系列で羅列していく必要がありますが、登記は時系列にならない場合があります。

登記簿を見やすいものにする、という観点からだと思います。

登記では、
時系列<見やすさ
を意識するのがよさそうです。

名変登記の場合は、特に如実に現れていますね。

これで、どんな登記を申請すればよいかわかりました。

試験対策なら、ここまででOKです。
(そもそも名変登記だけで2つの申請が必要な問題なんか出しませんが……)

注意 その弐

実務では、もうひとつ注意すべきことがあります。

添付書類をどうするか?

添付書類のことです。

登記原因証明情報として、住民票が必要です。

夫婦ですから、住民票は1通だけ取得しますよね(たいていは職権で)。

1通しかない住民票を2つの申請に添付する場合、添付書類をどうします?

前件で添付した書類を後件にも添付する際は、「前件添付」と記載します。

ところが、今回の場合ですと、2件目の登記申請書中の添付情報に、
"登記原因証明情報(前件添付)"
なんて書くとNGです("(前件添付)"が余計ということ)。

申請者が違うから、というのがその理由。

このあたり、お役所は頭が固いというか融通が利かないですよね。

住民票まで人ごとに取らせようなんて、金だけでなくて資源のムダですよ、まったく

この場合、1件目の添付書類に住民票のコピーをつけて、登記申請書中の添付情報に"登記原因証明情報(原本還付)"と記載します。

原本還付処理もお忘れなく(下のリンク先参照)。

さらに、住民票の正本に「1件目で原本還付して、2件目に添付」と書いた付箋を貼っておけば十分伝わります。

あと、氏名変更があるので、戸籍も要りますね(これは職権でしょう。本籍が他市ならなおさらです)。

解 答

これで、登記申請できますね。

実際にした申請を記載します。

登記申請書

(1件目)
登記の目的  所有権登記名義人住所変更
原因   年月日住所移転
変更後の事項  共有者工藤新市の住所
牧方市桜町2番3号
申請人  牧方市桜町2番3号 工藤新市
添付情報 登記原因証明情報(原本還付) 代理権限証明情報
登録免許税 金2,000円
(不動産の表示等は省略)

(2件目)
登記の目的  所有権登記名義人住所氏名変更
原因   年月日氏名変更
年月日住所移転
変更後の事項  共有者毛利愛里の氏名住所
牧方市桜町2番3号 工藤愛里
申請人  牧方市桜町2番3号 工藤愛里
添付情報 登記原因証明情報 代理権限証明情報
登録免許税 金2,000円
(不動産の表示等は省略)

もちろん、1件目と2件目を逆にしてもOK

講評

いかがでしたか?

文系の方からすれば、
「なんでこんなんで相談票を出すねん?」
と、言われそうですね。

以上、理系脳からすると思わず首を捻ってしまった名変登記の話でした。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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